関西在住のデザイナー集団「saido」

日常にとけこむアート/デザインを楽しむ。関西在住のデザイナー集団。

In インタビュー by Chiaki Ogura 2015-07-19

日常にとけこむアート
アートは美術館の中だけで楽しむ、といった特別なものでは、もはやありません。日々の暮らしになじむように、そっと寄り添うように存在しています。生活の中に自分らしい個性を表現することが、アートの主流になりつつあるのかもしれません。衣・食・住・プロダクト開発・空間デザインなど、様々なアプローチからアート・デザインと関わる企業、団体やメディアを取材します。

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デザインを楽しむ。関西在住のデザイナー集団
saido

様々なアーティストグループや活動団体があるなか、関西でひときわ目を引く集団があります。それは、社会人4、5年目の20代若手で構成される、関西在住のデザイナー集団「saido」さん。「Kansai の designer で omoshiroi ことをしよう!」というきっかけで結成されたそう。職業はインハウスデザイナーを中心に、プロダクトデザイン、工業デザインやUIデザイン、グラフィックなど様々な分野のデザイナーで構成されており、現在の所属人数は、約16名ほど。年に1度企画している展覧会が、活動の中心に据えられています。今回、次回展覧会のためのミーティングがあると聞き、取材にお伺いさせていただきました。

 

ーsaidoさんはどんな活動をしているのですか。

「元々は、就職活動中のインターンで知り合った仲間でスタートしたんです。2014年に第1回目の展覧会を開催してから、メンバーも少しずつ増えてきました。メンバーそれぞれにメインの仕事があり、saidoは、仕事上で実現できないことや、さまざまなアプローチの仕方を試す自由な実験の場として機能しています。2、3人ではなくこれだけの人数が集まって、ひとつのテーマで展示を作り上げることを継続的に行う団体というのは、珍しいかもしれません。自分の表現のため、商品化を目指したいなど、作品の展開や目的も本人の意向にゆだねています。展覧会に向けて、月に1回集まってミーティングを行いながら、約1年かけて準備をします。それぞれの業界の情報交換をしたり、アイデアや意見交換ができることも、よい刺激になっています」

 

ー第1回目の展覧会「GRAVITY」について教えてください。

 

 

「作品は、映像やインスタレーションなどジャンルも様々な13作品が揃いました。「重力」という展覧会テーマは、saidoが団体として伝えたい統一されたメッセージ性というよりは、夏休みの自由研究テーマのようなイメージです。また、お客さんが作品を見やすくするための、ひとつの定規という意味合いもあります。
仕事では短時間で作り上げなくてはいけなかったり、制約も多かったりするので、1年間じっくり腰を据えて作りたい作品に取り組めるのは楽しい作業ですね。色んな探究心や興味を形に出来るので。大学の卒業制作のような意識に近いかもしれません。また、素材や製造方法の幅も広がり、そこから得られる形の考え方やコンセプトの立て方は、本職にフィードバックして活かされることもあります」

 

ーどんな展示作品が揃ったのですか?

「重力のお皿」302design

グリッド線が書いてあるだけの凹んだくぼみのあるワンプレートと、理科の授業で習った「重力線」を重ねました。食べ物を置くと、その質量がまるで重力に引かれているように見え、器の上で小さな重力実験ができます。ライフスタイルの中で、重力を取り入れてみるという実験的な作品です。

「枝垂れ髪」yonanp

重力を日常的な現象に置き換えて考えてみたら、「垂れる」というキーワードに辿り着きました。カーテンを2つに結ぶ状態が、お下げの女の子の姿と重なったんです。また、カーテンは垂れることで空間を仕切っているということは、重力が空間を仕切っているともいえるのではないかと。毎日ヘアスタイルをセットするように、空間も様々な仕切り方で楽しもう、といったユーモアも含まれています。

「甘いつらら」yonanp

上記の「垂れる」と連動しています。子供の頃につららがもし食べられたらどれだけ楽しいかという妄想を実際に形にしました。可視化された重力を食べる、という作品です。

 

ーお客さんの反応から感じたこと。

「2014年9月と11月に、東京と京都で2日間ずつ4日間開催して、東京200名と京都100名で合計約300名ほど来てくださいました。東京では、東京デザイナーズウィークの期間と重なっていたこともあり、僕たちの展示会場だった中目黒では、他のデザイナーさんたちもオープンオフィスを行っていたりしたので、関心のある人がDMを持ってふらっと入りやすい状況だったようです。同世代や、展示に遊びに来てくれた人同士が繋がってコミュニティも広がって、新しい動きが生まれるきっかけにもなりました。
関西では、場所選びに悩みました。デザインやアートに関心のある人が、気軽に立ち寄れる場所が集まる場所や文化が薄いような気がして。東京でもデザインやアートイベントに人を集めるために、音楽やエンタメなどを組み合わせて頑張っているという状況の中、関西は東京に比べて人も少ないし、より努力しなければいけないと思います。今後は、そこをどういう風に改善すれば、より多くの人に見てもらえて楽しんでもらえるかを、僕たちなりに考えていきたいと思います」

 

ー次回の展覧会と今後のsaidoについて。

「次回のテーマは、「寿」です。2015年10月頃を予定しています。みんなでテーマ案を出し合って投票で決定しました。中でも、女性メンバーは全員一致。シンプルにハッピーなテーマです。おめでたいことってみんな好きじゃないですか。楽しそうなことをやってるな、って気軽に立ち寄ってもらいたいんです。デザインを高尚なものには絶対したくないと思っています。もっと親しみやすくていいし、近付き難いのはよくないです。展示の仕方やパンフレットのまとめ方なども、ちゃんと人に伝わるようにという部分を意識して作っています。もともとデザインは、人にわかりやすく伝えるためのツールでもあると思うので」

「saidoは焦らずゆっくり、出来ることを継続することを大切にしていきたいです。仕事と違って自由なことが出来る場というのが、いい効果を生んでいると思うので。同時に、今年から別ジャンルのデザイナーさんも新メンバーに加わってくれています。例えば、関西で活動している電子工作に強い「電化美術」の秋山さんと青野さん、竹・茶道具職人の石上さんなどです。今までメンバーにいなかったジャンルの方々の新しい視点や意見を取り入れながら、技術のシェアなんかもより活発になればなと。楽しみながら柔軟に、僕たちらしく続けていきたいです」

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【公式サイト】http://saido-design-project.com/
【facebook】https://ja-jp.facebook.com/saido.design.project

<次回展示予定>
saido design project exhibition vol.2「寿(ことぶき)」

■京都展
開催日:2015年10月13日〜18日
時間:12:00-20:00(17日、18日は19:00まで)
※10月17日は、レセプションパーティを予定
開催場所:MEDIA SHOP GALLERY
〒604-8031 京都府京都市中京区河原町通三条下る大黒町44

■東京展
開催日:2015年10月31日、11月1日
時間:12:00-18:30
※10月31日は、レセプションパーティを予定
開催場所:さくらギャラリー中目黒
〒153-0061 東京都目黒区中目黒2-5-28

※詳細は、facebookページに更新していきます

Chiaki Ogura

Chiaki Ogura . 岡山県出身。広告代理店・広報部にて勤め、現在はフリーライター・フォトグラファーとして活動中。ジャンルは幅広く、雑誌やWEB媒体などで執筆。ベンシャーンやアンディ・ウォーホルに感銘を受け、アートの世界に。ギャラリーや美術館の空間をこよなく愛する。作品を目の前にしたときの、右脳がぐらっと動かされる感覚がたまらない。comocomo.cafe ≫ 他の記事

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