FREE SOUND 解き放たれるオト展

ナレッジキャピタルとアルスエレクトロニカのコラボレーション展示、電磁波を聴く・音を観るという体験

poster for Ars Electronica in Knowledge Capital Vol.5 “Free Sound”

ARS ELECTRONICA In KNOWLEDGE CAPITAL vol.5「FREE SOUND 解き放たれるオト展」

大阪市北区エリアにある
グランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル イベントラボにて
このイベントは終了しました。 - (2016-01-28 - 2016-04-10)

In フォトレポート by Reiji Isoi 2016-03-10

芸術・先端技術・文化の祭典アルスエレクトロニカのコラボイベントが大阪梅田にあるグランフロント大阪内ナレッジキャピタルで開催されています。

アルスエレクトロニカはオーストリアのリンツ市で1978年に「電子音楽の祭典」として始まり、近年メディア・アートの国際イベントとして有名なものとなっています。1987年にアルスエレクトロニカ賞が1987年から始まり、回を重ねるごとに賞が増え、コンピューターアニメーション・FILM・VFX部門やインタラクティブアート部門、Web関連部門などの各分野において、近年の画期的なイノベーションを選出しその活動を奨励するほか、メディアセンターや美術館・博物館としての機能を持つアルスエレクトロニカ・センターを1996年より運営しています。

「FREE SOUND 解き放たれるオト展」では、ベルリンを拠点に活動するサウンドアートのパイオニア、クリスティーナ・キュビッシュ氏の作品『Cloud』と、オープンリール式テープやブラウン管テレビなど今では使われなくなった装置を新しい音メディアに変換することで知られる和田永氏の作品『時折織成ー落下する記憶ー』を紹介しています。

展示作品のひとつ『Cloud』はベルリン在住アーティストのクリスティーナ・キュビッシュ氏によるものです。彼女は、過去に「エレクトリカル・ウォーク」という、都市を歩きまわることで、公共空間に偏在するあらゆる電磁波を聴覚を通じ体感するというプロジェクトを発表しています。

本展示『Cloud』を体験するために用意されているヘッドフォンは氏が独自に開発したもので『エレクトリカル・ウォーク』プロジェクトのものと同様のものです。この特殊なヘッドフォンを装着することで、あらゆる電気製品から発せられる電磁波を聴くことができます。ノイズ、高周波と低周波からなる複雑な層、リズミカルなシーケンスのループ、小さな信号のグループ、長いドローンといった音に変換され、絶えず変化する音響がランダムに奏でられる様子を聴くことで、公共空間に不可視でありながら偏在する電磁波を音として知覚するという「エレクトリカル・ウォーク」のコンセプトの一端をも体感できます。ヘッドフォンを装着した鑑賞者は、その位置と電磁波を発するものとの位置関係により、常に変動するサウンドスケープを聴くことができるという作品です。

もうひとつの展示作品『時折織成ー落下する記憶ー』は、日本人アーティスト和田永氏によるものです。テープ再生装置であるオープン・リール・デッキを、それが鳴らす音響と同時に機器から吐き出されるテープ自体もリアルタイムかつ視覚的に鑑賞できるインスタレーション装置に再構築したもので、アルスエレクトロニカ・フェスティバルでも紹介されています。和田氏は、自身の活動の説明に、思想家のイヴァン・イリイチの「異なった使い方をした道具には、環境を豊かにするチャンスが宿っている」という言葉を引用することもあり、これまでにも映像出力機器であるブラウン管モニターを音響装置に改良したインスタレーション作品やそれらを使用したパフォーマンスにより「音を観る/映像を聴く」という体験を提示しています。本作品は、本来の役目を終え時代遅れとなった電子機器を、現代のコンピュータ技術を用いてプリコラージュし新たな道具として再発明することを作家活動を通じて実践する和田氏の代表作のひとつです。


通常こうした作品は、美術館に展示されることが多いですが、本展示会場の「ナレッジキャピタル」は、大阪・梅田駅と直結した複合施設「グランフロント大阪」内にあり、誰もが気軽に訪れることができます。ナレッジキャピタルは、企業人、研究者、クリエーター、そして一般生活者が交わり、それぞれの「感性」と「技術」の融合で「新しい価値」を生み出すことを目的とした「知的創造・交流の場」をコンセプトとしており、オフィス、サロン、ラボ、ショールーム、シアターなど、人が交流するためのあらゆる施設が揃っています。施設の名称であると同時に、活動自体の名称でもあり、コミュニケーターを介して、人、企業、製品、体験を柔軟に繋ぎコラボレーションのきっかけをつくる、技術と文化のためのサロンとしての機能も提供しています。

今回紹介した作品展示の他にも、大学、企業によるさまざまな最新技術や試作品に直接触れることができるナレッジキャピタル「The Lab(ザ・ラボ)」を是非、この機会に訪れてみてはいかがでしょうか?

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【開催概要】
ARS ELECTRONICA in the KNOWLEDGE CAPITAL Vol.05
「FREE SOUND 解き放たれるオト展」

会期    2016年01月28日 10:00 ~ 2016年04月10日 21:00
出展作家  クリスティーナ・キュビッシュ、和田永
展示時間  10:00から21:00まで 
会場    グランフロント大阪北館2階 ナレッジキャピタル The Lab.
ホームページ  http://kc-i.jp/arsinkc/vol5//

「時折織成ー落下する記憶ー」観覧可能日時
《展示スケジュール / 3/31(木)~4/9(土)》

・3/31(木)14:00〜、16:00〜
・4/1 (金)14:00〜、16:00〜
・4/2 (土)14:00〜、16:00〜
・4/3 (日)14:00〜、16:00〜
・4/4 (月)14:00〜、16:00〜
・4/5 (火)14:00〜、16:00〜
・4/6 (水)14:00〜、16:00〜
・4/7 (木)14:00〜、16:00〜
・4/8 (金)14:00〜、16:00〜
・4/9 (土)14:00〜、16:00〜

※展示作品の運用に伴い、システムのメンテナンスにより実演が行えない場合もございますので、予めご了承ください。
※ご覧いただける日程・時間は変更になる可能性がございます。

Reiji Isoi

Reiji Isoi . 1978年生まれ。00年代前半より音楽業界を中心に写真の撮影活動を始め、音楽・美術・文芸誌に写真・インタビュー記事等を寄稿するほか、映像撮影・制作の仕事に携わる。仲間と突発的に結成した『宇宙メガネ』からも不定期に発信することがある。各地で起こる皆既日食、米国のバーニングマン、インドのクンブメーラ祭、古代遺跡でのイベントなど、津々浦々で出会う作品や表現者たちとの交流を通じ、森羅万象の片影を捉えようとカメラを携え日々撮り続けている。 http://razyisoi.jp/ ≫ 他の記事

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