現在和歌山県立美術館にて、近代日本における版画界の巨星であり、また抽象表現のパイオニアとして知られる恩地孝四郎(1891-1955)の20年ぶりとなる回顧展が開催しています。
竹久夢二との出会いをきっかけに画家を志した恩地は、1914年に田中恭吉・藤森静雄と詩と版画の雑誌『月映(つくはえ)』を刊行します。同誌で発表した1915年の《抒情『あかるい時』》等は、日本における抽象表現の先駆けとなりました。
1920〜30年代には時代と呼応しつつ様々な版表現の可能性を追求し、戦後になると専ら抽象版画の連作を発表します。特に、作者の心にわき起こる感情をかたちにした「抒情(リリック)」シリーズは、一貫して画業の根底をなすものでした。版画表現の近代化に向けて偉大な足跡を残した恩地の自由な創作姿勢は、後世の版画家たちにも多大な影響をあたえています。
本展では海外からの里帰り作品を含む版画243点を中心に、油彩、素描、写真、ブック・デザインなど、その領域横断的な仕事も併せて、約400点を一挙紹介しています。「月映」で発表した初期の作品をはじめ、女性のしぐさや丸みを表現するなどした具象的な版画。抽象作品では、人体の一部や楽曲を聞いた感動などを円や線で表現。また、木版だけでなく魚のヒレや木の葉などを版に用いるなど新しい表現を追求し続けた恩地の世界観に触れることができる展覧会です。
【展覧会概要】
「特別展 恩地孝四郎展 抒情とモダン」
http://www.momaw.jp/exhibit/after/post-115.php
会場:和歌山県立近代美術館 2階展示室
会期:2016(平成28)年4月29日(金・祝)ー6月12日(日)
開館時間:9:30~17:00(入場は16:30 まで)
休館日:月曜日
観覧料:一般700(560)円、大学生400(320)円 ( )内は20名以上の団体料金
*高校生以下、65歳以上、障がい者の方、県内に在学中の外国人留学生は無料
*5月28日(土)は「紀陽文化財団の日」として大学生無料
主催:和歌山県立近代美術館、東京国立近代美術館、産経新聞社