写真の美術/美術の写真「浪華」「丹平」から森村泰昌まで

「写真とは何だろう?」と考えてみるのも、アートのたしなみ。

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「写真の美術/美術の写真 『浪華』『丹平』から森村泰昌まで」展

大阪市中央区エリアにある
大阪市立近代美術館(仮称)心斎橋展示室にて
このイベントは終了しました。 - (2008-01-26 - 2008-03-23)

In レビュー by KABlog2008 2008-03-03

by Toshiki Minamiguchi

「写真とは何だろう?」と考えてみるのも、アートのたしなみ。
写真には写らない美しさがあるから」と歌うロッカーがいるかと思えば、「この写真この世のものでないものが写ってるぞ」というものがいる。つまり、写真とは、ごく日常的な感覚からすると、現実を写すものであって、現実にない(いない)もの、現実をこえるものは写らない(たまには写る?)といえる。

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[画像:天野龍一「女(ソラリゼーション)」1930年代 大阪市立近代美術館建設準備室蔵]

しかし、現在では、デジタルカメラが全盛で、撮影した後からコンピュータでいくらでも処理することができる。ストレートフォトに慣れ親しんでいる方には、ほんと(現実)なのかうそ(非現実)なのか区別すらつかない写真もある。オートフォーカスなんて過去の話、被写体の笑顔をみつけてはシャッターをきるカメラだって発売されてるご時勢だ。もはや写真は、ふだんの生活レベルにおいても、写真というカテゴリーだけでは語ることのできない得体のしれないものになってしまったのだろうか。

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[画像:植松奎二「水平の場」1973年 個人蔵]

大阪市立近代美術館(仮称)心斎橋展示室で開催されている企画展を観て、あらためて「写真とは何だろう?」と考えた。アマチュアであれプロであれ、撮影することを意識化してる人をのぞけば、ふだんから写真について考えている人は少ないだろう。が、そろそろ、みんな「写真とは何だろう?」って気になりだしてるかも。
カメラ付きケータイで撮影して友人などに添付メールすることは、写真を撮るというよりも、プレゼントをする行為に意義があるようだし、自分のスナップ写真がウエブやマガジンなどに掲載されたりすると、それは自分の分身ともいえるわけで写真イコール自分であったりする。また、写真表現に携わるものからすると、写真をどうとらえるかは自分の表現活動にも大きく影響してくることがらだ。
と、なると、このような手におえない得体のしれない写真というものを、現代美術作家が放っておく手はない。われわれの先を歩き、新しい価値を嗅ぎ分けては、意表をつくもの、ときには意味不明とさえいわれても先行くものを提示しつづける作家にとって、写真は、表現活動上よきパートナーになりうるわけだ。
本展は、「浪華、丹平から―大阪の写真家たち」「70年代―新しい表現媒体・写真」「1980~90年代―多様化する写真表現」の3つのセクションで構成され、大阪に関わりのある作品など計69点が展示されている。

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[画像:森村泰昌「美術史の娘(王女B)」1990年 大阪市立近代美術館建設準備室蔵]

帰りに地下鉄のホームであるビルボードに目がいった。壁掛けテレビだって写真ではないか、と思った。そう考えると、鏡だって、前に在るものをリアルタイムで写し出す写真では。だれにでもじぶんだけの「写真とは何だろう?」があるはずだ。それは、あなたにとっての「アートとは何だろう?」と同義のものかもしれない。

「写真の美術/美術の写真 『浪華』『丹平』から森村泰昌まで」展
2008年01月26日 ~ 2008年03月23日まで
大阪市立近代美術館(仮称)心斎橋展示室にて展示。

南口俊樹
Toshiki Minamiguchi. ギャラリスト、クリエイター。大阪府在住。コマーシャルギャラリー、fabre8710(ファーブル芸術事務所)のオーナー、ディレクターとして、ギャラリー内外の展覧会企画に携わる。所属アーティストのプロモーション、マネージメントを、国内外において積極的に展開している。また、クリエイターとしても、企業広告のクリエイティブディレクション、コピー制作など、さまざまなコミュニケーション活動に携わっている。

KABlog 2008

KABlog 2008 . 関西アートビートが、大阪のベルギーフランドル交流センターとNPO法人GADAGOの共催で運営されていた2007年4月〜2008年7月当時の記事です。 ≫ 他の記事

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