ギャラリーの魅力は、そこで行われる展覧会だけではありません。空間のつくられ方やオープンまでのエピソードなど、普段はあまり着目しないギャラリーの別の魅力にも、目を向けてみてはいかがでしょうか。
「Gallery, Cafe, Artshop Black bird White bird(BBWB)」は、京都市の東北部に位置する京都造形芸術大学付近、学生に人気の一乗寺エリアの一角にあります。BBWBを運営するのは、大久保加津美さんと忠彦さんご夫妻。ギャラリーの名前は、一冊の短編集『白の鳥と黒の鳥』が由来となっています。
「クリエーターたちとよりダイレクトに関わりたい」
以前編集プロダクションに勤めていた加津美さんは、イラストレーターやデザイナーと共に仕事をすることにやりがいを感じていました。「自分だけだと最高でも100点。でも協力してやれば20点のときもあるけど、200点のときもあると思うんです。それが編集者の醍醐味だと思う。」と語る加津美さん。よりダイレクトに作家たちと関わりたい、という思いが高まり、勤めている会社の一角を使い、ギャラリーを立ち上げました。
その後京都へ拠点を移しても、そのときの想いは変わりません。「東京の現場で今、活躍する作家さんを関西の作家さんやお客さんに見てもらいたい」と展覧会の半分は関東の作家さんを選出しているとのこと。
「作家さんたちには想定外の使い方をしてもらえる」
BBWBの空間を設計したのは、建築家の吉野聡美さんです。普段から「使う人の『素』を正直に表せるように努めている」と語ります。自分たちの手で改修したい、という二人の思いに応えるように、吉野さんは「最小限で最大の効果」を心がけたギャラリーづくりの方針を提案します。
このリノベーションの中で最も分かりやすい変化は、かつて使われていた空間の仕切りを一面だけ残して取り去ったところ。残った壁面と特徴的なガラス張りの回転扉によって、「入口」から細い空間へとまず導かれ、そこから広い空間を通って「出口」にいたります。加津美さんが持っていたこの動線イメージを、吉野さんはシンプルな工夫で実現させました。
京町家風の建物ゆえに必ずしも広くない間口ですが、長い奥行きによる展示壁量の多さと、「空間的な工夫」によって、厚みのある展示が可能です。シンプルな改修の背景にあったのは、「作家さんたちには、想定外の使い方をしてもらえる」という、作家さんたちに対する信頼でした。
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ギャラリーでは、これまでイラストレーションを中心に、多くの展覧会をコンスタントに開催しています。取材当時は東京と名古屋で活躍するグラフィックデザイナーによる三人展「片思い展」が開催され、今後は展示販売や平面作品の展覧会などが開催予定。「ゆくゆくは関西の作家さんを関東で紹介したい。例えば関東のギャラリーと交換展示もしてみたいですね。」と今後の展望を語ってくれました。
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Black bird White bird
http://blackbird-whitebird.com/
写真撮影:榊原充大、山田毅 スケッチ:榊原充大