遠方からでも来た甲斐があったな、と思ってもらいたい

兵庫篠山「colissimo」「rizm」

In トップ記事 フォトレポート by Mitsuhiro Sakakibara 2014-06-12

ギャラリーの魅力は、そこで行われる展覧会だけではありません。空間のつくられ方やオープンまでのエピソードなど、普段はあまり着目しないギャラリーの別の魅力にも、目を向けてみてはいかがでしょうか。

colissimorizmは、近年クリエイターが多く移住している兵庫県の山間、篠山市は今田(こんだ)にあるギャラリー&カフェ。京都市内からは電車で1時間半、最寄り駅からバスで30分と必ずしもアクセスはよくありませんが、京都大阪神戸からはもちろん、イベントによっては東京から足を伸ばす人もいるそうです。

「遠方からでも来た甲斐があったな、と思ってもらいたい」

このふたつのスペースを運営する前中久和さんは、近くの兵庫県三田市のご出身。あるとき、70年前に建てられ20年以上も放置されていた元郵便局舎に出会います。この建物に魅力を感じた前中さんは、ここが解体の危機にあることを知り、「もったいない」ということで2009年に購入。篠山への移住者が増えてきた2012年頃からカフェを、その後ギャラリーをスタートします。

2013年からは、colissimoの近くにあった米蔵を借り、より大きなスペースを持つギャラリーrizmがスタート。展覧会のみならず、それに伴ってライブやパフォーマンスを定期的に開催しています。「遠方からでも来た甲斐があったな、と思ってもらいたい」という理念のもと、音楽家のharuka nakamura、青葉市子、高木正勝や、今後展示予定の写真家横浪修、川内倫子のように、第一線で活躍する作家を取り上げた丁寧な展示やライブを勢力的に行っています。

環境の良さに惚れ込んで移り住む作家も多い地域にあって、展示を見ながら食事もお茶もできる場所はなかなか他にありません。前中さんは「少しでも地域が活性すれば良いなという思いで頑張っています」と語ります。事実、colissimoとrizmは、多くの人々にとって篠山に足を運ばせるひとつの理由になりつつあるように感じました。

ノスタルジックな中に洗練された雰囲気が共存する空間

colissimoのカフェとなっている一階部分では、郵便局の執務空間はほぼそのまま。入り口やカウンタースペースを残すことで特徴的な顔を見せつつも、奥にフロアや壁を新たに導入することで、ノスタルジックな中に洗練された雰囲気が共存しています。

ギャラリーとして使う元電話交換局の二階は、前中さんが影響を受けた香川県の直島にある地中美術館「モネの部屋」を参考に、天然大理石のモザイクタイルを隙間の目地を埋めずに敷き詰めたフロア。付け足された真白な壁面と立派な木がむき出しの天井空間と相まって、印象的な空間をつくり出しています。

sketch_colissimo

一方でrizmの空間は、フロアから天井の一番高いところまで約8メートルという高さが圧倒的。蔵の内側はそのままに、空気を循環させ、米を湿気から守るため、壁面から離れたところに柱が並ぶのが、この空間の特徴です。手を入れたのは、新設した舞台とストックヤードのみ。舞台裏には前中さんが海外から買い集めたアンティークの品々が溢れています。このスペースは控え室にもなり、またストックヤードは二階を「桟敷席」にもでき、広大な空間を多様な用途に使えるような心憎い工夫が随所にありました。

sketch_rizm

「リノベーションの本質は、人の目にあまりつかないところにこそある」

前中さん自身とさまざまな協力者によって、どちらも品のある空間ができあがっていますが、「内装を褒めてもらうことは光栄なのですが、柱や屋根や樋のような、あまり人の目につかないようなところをまずきっちりと直すことがリノベーションの本質ですね」とのこと。colissimoを案内しながら、「ここが僕にとって一番大事なリノベーション」と、階段の縁に前中さん自身がホームセンターで買って取り付けた「滑り止め」を指差す、空間や利用者に対して誠実な姿が印象的でした。

取材当日はインスタレーション「thu. ki wa wa」展がcolissimoとrizmにて、タナカトシノリ写真展がcolissimo二階にて開催されており、6月からは福田匠「オブジェと古物の世界」展、7月からはcolissimoで横浪修「100 children」、rizmで横浪修「assembly」の展示がはじまります。


colissimo / rizm(コリシモ/リズム)
http://colissimo.jp

写真撮影:榊原充大、山田毅 スケッチ:榊原充大

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Mitsuhiro Sakakibara

Mitsuhiro Sakakibara . 建築や都市のリソースを利用して暮らし働く人の声を集め、彼らへのサポートを行う。個人として取材執筆、翻訳、改修協力、ネットカフェレポート等を実施。また、多くの人が日常的に都市や建築へ関わる経路を増やすことをねらいとし、建築リサーチ組織「RAD(http://radlab.info/)」を2008年に共同で開始。建築展覧会、町家改修その他ワークショップの管運営、地域移動型短期滞在リサーチプロジェクト、地域の知を蓄積するためのデータベースづくりなど、「建てること」を超えた建築的知識の活用を行う。 ≫ 他の記事

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