2019年度までに、滋賀県は大津市にあるびわこ文化公園の文化ゾーン内に、新たな美術館がオープンします。
2013年に策定された新生美術館基本計画に基づくこの計画では、美術館新館が建設されるだけではなく、「開館から30年が経過し、施設の老朽化や収蔵庫等の狭隘化が進行」また「利用者が美術館に求めるニーズに応えられていない」ということから、滋賀県立近代美術館の改修、そしてびわこ文化公園の整備が一体的に行われる予定です。ひとつの建物だけにとどまらない、周囲の風景自体を再整備するような大規模な計画です。
びわこ文化公園内に1983年に完成した滋賀県立近代美術館は、「近代日本画」、「戦後のアメリカと日本を中心とした現代美術」、「郷土滋賀県ゆかりの美術」の収集・保管に力を入れ、定期的に企画展も実施してきました。現在の新生美術館計画では、近代美術のみならず仏教美術とアール・ブリュットにも焦点が当てられます。
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一次審査を通過した5組の建築事務所
新生美術館の設計者は公募によって選定される予定。2014年に設立された選定委員会により、部会長に建築史家の布野修司氏、副部会長には台湾で「台中メトロポリタンオペラハウス」を完成させた建築家伊東豊雄氏が選出され、設計者公募の条件が決定。12月に第一回審査が行われ、2015年1月には、参加表明をした13組の中から以下5組の建築事務所が第二次審査に進むことが公表されました。
① 2006年に青森県立美術館を完成させた「株式会社青木淳建築計画事務所」
② 那珂川町馬頭広重美術館(2000)や根津美術館(2009)などを手がける「株式会社隈研吾建築都市設計事務所」
③ 2007年に横須賀美術館を完成させた「株式会社山本理顕設計工場」
④ 金沢21世紀美術館(2004)やニュー・ミュージアム・オブ・コンテンポラリー・アート(2007)、ルーブル美術館別館「ルーブル・ランス」(2012)などの設計を行う「有限会社SANAA事務所」
⑤ 唯一の関西からの組織であり、改修される予定の滋賀県立近代美術館(1983年完成)の設計者でもある株式会社日建設計の大阪オフィス。
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2015年2月27日には、公開プレゼンテーションおよびヒアリングを実施
新生美術館計画の中の「近代美術」「仏教美術」「アール・ブリュット」という方針に関しての問題は、近代美術館の老朽化という課題だけではありません。
国宝・重要文化財の指定件数全国第4位を誇る滋賀県において、仏教美術は、多くの作品を収蔵する「県立琵琶湖文化館」が老朽化などにより休館し、後継施設を確保すること、また痛みの激しい文化財を地域で保存管理することが困難なケースが増加していることが課題となっています。一方、アール・ブリュットに関しては、障害者福祉施設などでの先駆的な取り組みがあり、県内に多くのアール・ブリュット作家が存在する中、作品の県外・国外への流出や散逸の防止、また継続的な作品発見や発信の場の確保が求められているという状況があります。
2015年2月27日には、公開プレゼンテーションおよびヒアリングの後、非公開審査を行い、設計者1者が特定されます。緑豊かな環境の中にどのような美術館が置かれ、それにともないどのような既存建物の改修や公園整備がなされるか、またいくつかの課題を抱える現状に対してどのような応答がなされるのか、ぜひご注目ください。
この新生美術館計画の進捗については、こちらのページを参照してください。
http://www.pref.shiga.lg.jp/c/kemmin-s/2014newmuseum/sekkeishapuropo/jisshikokuti.html
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※本記事の画像は、flickr内でクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの付与されたものを利用しています。
①Sumiko Hashimoto「Aomori Museum of Art」
②Naoya Fujii「Nakagawa-machi Bato Hiroshige Museum of Art」
③Forgemind ArchiMedia「Riken Yamamoto – Yokosuka Museum of Art 27.jpg」
④CTG/SF「New Museum of Contemporary Art, New York, by SANAA (Kazuyo Sejima + Ryue Nishizawa)」
⑤Yuya Tamai「the museum of modern art, shiga」