poster for リ・ミンホ 展
[画像: リ・ミンホ 「Fil blanc n 47」 インクジェットプリント 60 x 60 cm]

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韓国・ソウル出身のアーティスト、リ・ミンホによる個展が開催されます。1990年からフランスのパリにて本格的な作家活動を開始し、1990年代後半より画家から写真家に転向しました。リが継続してテーマとするのは、現代におけるアイデンティティの喪失と匿名性です。本展では、リが近年取り組んでいる「糸」をモチーフにした作品群が展示されます。糸は両端が異なる時間と空間に据え付けられた物質であり、そのイメージはギリシャ神話「アリアドネーの糸」に結び付けられます。この神話でテーセウスが迷い込んだような迷宮とは、入口と出口がわからず、(不)可能性のなかで「無限の反復」が行われる空間だと彼女は語ります。シリーズ《赤い糸》は迷宮のような空間を惑うように進む小さな赤い糸によって着想源となったギリシャ神話を強く想起させますが、一方のシリーズ《白い糸》では、量感のある巨大な糸玉が不可思議に配置されることで、神話への現代的解釈が織り込まれます。どこから来たかもわからない白い糸玉は時空間からニュートラルな存在として、何にも属することのない現代人の存在状態を示唆します。また神話では入口の扉に一端を結わえた糸玉がテーセウスを迷宮から救い出しましたが、彼女の作品で糸玉が足跡を残そうとするのは、地球上の特定の「場所」を想起させない匿名の空間であり、出口があるのかすら定かではありません。しかし現代の迷宮の只中に曝け出された巨大な糸玉は、戸惑っているようにも、安らいでいるようにも映ります。まるで空虚な宇宙に浮かぶ天体のように根無し草の私たちは、現実への根を回復する必要に迫られているというよりも、それらに縛られない新しい存在様態を、戸惑いながらも受け入れつつあるのかもしれません。時空間と人間との二重の匿名性、そしてその中での人間の在り方を象徴的に暗示することにより、本シリーズは彼女の今までの仕事の一つの結実となるとともに、現代の「神話」あるいはその不在を効果的に描き出しているのではないでしょうか。

メディア

スケジュール

2018年02月06日 11:00 ~ 2018年03月01日 19:00

アーティスト

リ・ミンホ

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