野口哲哉展 -野口哲哉の武者分類図鑑-

関西初披露!!知識に裏付けられた戦国的空想世界。

poster for Tetsuya Noguchi “Historical Odyssey”

「野口哲哉展 - 野口哲哉の武者分類図鑑 - 」

京都府(その他)エリアにある
アサヒビール大山崎山荘美術館にて
このイベントは終了しました。 - (2014-04-19 - 2014-07-27)

In フォトレポート by Tsuyoshi Yamada 2014-06-06

アサヒビール大山崎山荘美術館では、現在企画展「野口哲哉展 -野口哲哉の武者分類図鑑-」を開催しています。本企画展は、練馬区立美術館との共同企画巡回展であり、先行した練馬区立美術館では、大きな反響を呼んだ展覧会です。

アサヒビール大山崎山荘美術館は、大阪府と京都府の境にある天王山の山腹に位置しています。淀川の分岐点にあり、美術館からは木津川・宇治川・桂川の三川が流れる美しい風景を見ることができます。

勝敗や運命の重大な分かれ目という意味の「天王山」と言う言葉がありますが、まさにその天王山がこの山であり、羽柴秀吉が明智光秀を破ったという山崎の戦いの逸話からこの言葉が生まれました。そういった歴史深い場所に、まさに相応しい作品を制作しているのが、美術家の野口哲哉です。

1980年生まれの野口哲哉は、樹脂やプラスチックなど、現代的な素材を駆使して古びた姿の鎧武者を造形し、それらの織りなす嘘とも現実ともつかない魅力的な世界観を構築する美術家です。

野口哲哉の作り出す作品群は、大正時代に建てられ、その後昭和期に増築されたアサヒビール大山崎山荘美術館の雰囲気に見事にマッチしています。この美術館では、陶磁器を中心として、漆器、染織、西洋絵画、現代彫刻などで構成されるコレクション作品を常設陳列しているのですが、野口哲哉の作品は、その歴史ある作品たちと同じ時を過ごしてきたかのような錯覚すら覚えます。

野口哲哉の作り出す作品は、絵画や立体作品だけでなく、その作品に流れている世界観まで構築されており、展示では、その物語をキャプションという形で鑑賞者は知ることになります。歴史に裏打ちされた嘘とも現実ともつかない物語に、鑑賞者はすっかり野口ワールドへと引き込まれる訳です。

しかしよくよく見れば、それが創作された世界であることが、ちゃんと読み取れるように計算されているということにまた驚かされます。野口哲哉が、決して作品を人間の等身大サイズで制作しないことや、多くのキャプションに「※以上は作者が創作した架空の解説である」などの書き込みがあることなどで、創作された世界の面白さをちゃんと鑑賞者に伝えています。

平面作品《Sleeping Head》では、甲冑が眠っているような描写が描かれていますが、立体作品《Talking Head》では、甲冑が着用している人物に幾分尊大そうに語りかけています。解説によれば、立体作品の人物は平面作品の数世代後にあたり、引き継いだ甲冑が世代を超えて経験を蓄え、着用者に対する発言が増したのであるということが解説されています。このキャプションも作家本人が創作しています。なんともおかしみに溢れた作品です。

また今回特別に制作した《GENERAL ASAHI》には、この作品が、屏風などから切り出されたものかもしれないという逸話を作り、近畿在住の某学芸員や都内銀座在住の某美術画商が登場し、作品の経緯についていろいろな見解があるというようなエピソードまで盛り込まれております。もちろんこれも作者が創作したエピソードなのです。

野口哲哉の作り出す世界に真実味があるのは、抜かりのない歴史や時代背景の研究と共に、それを作り出すことのでき、伝える事のできる技術に裏付けされています。

《Target Marks 1580・1610》では「鎧兜が着用者に与える精神的作用の変遷」をコンセプトにしており、左側は織田信長の生きた戦国末期の時代の鎧兜を、右側はそこから30年後の桃山時代末期を設定して造作されています。同じ人物の着用している武具も30年の間の時代の移り変わりに合わせて、様変わりしているというものです。戦国期には、黒を基調とした意匠が多く用いられ、桃山期には、赤、黒、金、銀などの色を用いたものが使われていたという歴史背景を組み込んだ作品です。

このような歴史に対する造詣の深さを、展示では随所に感じる事が出来ます。

本展覧会では、企画展示だけでなく、常設展示の作品にまぎれて野口哲哉の作品が展示されていることも魅力の一つです。常設展示の中に野口哲哉作品が、ふっと入り込んでいる様は不思議な調和があります。是非探してみてください。

関西初披露となる本展では、練馬区立美術館では展示されなかった最新作も公開され、初期から現在まで、野口哲哉のほぼ全作品といえる約90点を鑑賞することができます。歴史感じる山崎の地で、知識に裏付けられた戦国的空想世界をぜひ堪能してみてはいかがでしょうか?

写真撮影:山田毅

Tsuyoshi Yamada

Tsuyoshi Yamada . 東京都小平市生まれ、武蔵野美術大学芸術文化学科卒業。長らく武蔵野美術大学で、研究制作を続けて、その傍ら、美術展企画や舞台制作、ドキュメンタリー制作などに尽力を注ぎ、芸術と美術、作家と作品、ものつくりの世界に触れる。2013年京都に拠点を移し、デザインとアートの世界の周辺に身を置いている。株式会社モーフィング所属。 ≫ 他の記事

KABlogについて

Kansai Art Beatの運営チームにまつわるニュースをお伝えします。

Facebook

KABlogのそれぞれの記事は著者個人の文責によるものであり、その雇用主、Kansai Art Beat、NPO法人GADAGOの見解、意向を示すものではありません。

All content on this site is © their respective owner(s).
Kansai Art Beat (2004 - 2020) - About - Contact - Privacy - Terms of Use