ブリュッセルにおけるアートの状況2015

ベルリンを超えた「アートのユートピア」になるだろうか?

In 特集記事 by Chisai Fujita 2015-03-25

昨年、香港シンガポールとアジアにおけるホットなアートスポットを取り上げた。今回はヨーロッパへ。この10年間、世界中のアーティストたちはドイツ・ベルリンに集まった。いまその流れはベルギー・ブリュッセルに移っている、ともいう。そんなブリュッセルのリアルな現状を伝えていこう。

ベルギーの首都ブリュッセルには、現代美術系の施設がいくつもある。まずは、そのうちの3つを紹介したい。

■WIELS
ブリュッセルで現代美術と言えば、WIELS。視覚芸術だけでなく、舞台芸術も行うアートセンターとして、ベルギー国内外のアーティストが発表を行っている。元ビール工場だったという建物は、1階に受付、カフェやショップ、2階以上が展示室。アーティスト・イン・レジデンスも公募している。

■CENTRALE for Contemporary Art
市内中心部のサント・カトリーヌ教会(Sainte-Catherine church)の隣にあるCENTRALE for Contemporary Art。2006 年にオープンして以来、その名の通り、インスタレーションや映像といった現代美術の展覧会を見ることができる。

■ARGOS
映画やビデオアートといった映像専門の美術館として1989年に設立。1階が展覧会用のスペース、2階にBLACK BOXと呼ばれる映画用の鑑賞室と予約制のメディアライブラリーがある。過去45年間分、約4500名の映像作家/ビデオアーティストによる作品コレクションも行う。

いまのブリュッセルで注目すべきことは、ギャラリーの勢いであろう。

ブリュッセルでの現代美術の展覧会情報が知ることができるサイトNECAを見ると分かるように、展覧会オープニングの数は半端ない。さらに掲載されているギャラリーも40軒近くもあり、実のところこれからも増加傾向にあるという。このような状況について、D+T Project Gallery のディレクターであるアレクサンドラさんはこう語る。

「ブリュッセルは古くから芸術に関心を持つ人が多く、新しいトレンドやアーティストの 活動に注目をしてきています。世界的な経済危機にも関わらず、人々は作品を買い、ブリュッセルのアートシーンは活気に満ちています」

ウェブサイトだけでなく、ギャラリーに置かれたガイドマップも充実している。このうちのひとつ「ART WALK」を主宰するザビエルさんにも、ブリュッセルの現状を聞いてみた。

「現在のギャラリーやアートスペースは、2010年から2013年にできています。私が主宰する『ART WALK』は、大手のギャラリーが集まるIxelles地区やdowntownと新しいスペースが集まるmidi駅近くのSt.gilles地区を、観客の目線でつなごうとしています。ブリュッセルはパリ、ロンドン、オランダのアムステルダムへ約2時間の位置にあります。それでも家賃は安く、町が小さいためにすぐ美術関係者と会うこともできます。アーティストだけでなく、キュレーターやコレクターも移り住んできていますよ」

特にアツい2つのギャラリーコンプレックスを紹介しよう。

■Rivoli Building
ブリュッセル市街地から少し南へ、トラムのAbbaye駅近くのエリアにあるビル。ここは今、ギャラリーのオープンラッシュのようだ。近くにも店舗を構えるXavier Hufkensやベルギー以外の国からもギャラリーが出店している。私が行った2月は、路面店だけでなく「これからオープン」と書かれたスペースがビルの1階にいくつもあったほどだ。ユニークな建築にも注目したい。

■Régence通りのビル
Monument à la Gloire de l’Infanterie belge の近く、ブリュッセル市街地南部にあるRégence通りに面したビルにも、ギャラリーが集まっている。建物は手前と奥の2つに分かれ、それぞれ3階建て。入居するギャラリーは、この1年のうちにオープンしたものも多い。しかしいずれも見ごたえがある作家や作品を扱っており、ブリュッセルのアートのアツさを実感することができるだろう。

また、ユニークなアートスペースもある。

NICC
ショウウィンドウ越しに、24時間いつでも展覧会を見ることができる。私はすべてのギャラリーを見終わった夜に行ってみた。NICCでは、こうした展示だけでなく、レクチャーやイベントも頻繁に開催している。

そして、アートフェアも開かれている。

私が行ったときにやっていたのが「Affordable Art Fair」だ。このアートフェアは、日本以外の世界各地で開かれており、出品作品の価格が安いため、手に入れやすいことが特徴である。ブリュッセルの場合、Tour&Taxisという大きなコンベンションセンターが会場となり、90ものギャラリーが出展していた。そして写真で分かるように、お客さんがひしめきあっている。そして多くの人たちが気軽に作品を買い求めており、チケットを求めるお客さん、作品を買って帰るお客さんで出入口に行列ができるほど。

他にも2015年は4月25~27日に開催される「アートブリュッセル」、その同時期に「ブリュッセルアートフェア」など、ブリュッセルでは頻繁にアートフェアが行われている。限られた人たち向けの日本のそれらに比べて、ブリュッセルでは多くの人たち(子どもでさえも)が集まり、購買していること、つまりアートの関心度がかなり高い街であると言えるのではないだろうか。

またブリュッセルから電車で約40分のアントワープには、アントワープ現代美術館(M HKA)があり、現代美術のギャラリーも多い。中でも要予約であるが、もし機会があれば訪れてほしいスペースを紹介する。

■Axel Vervoordt Gallery, Kanaal

アントワープ市街地と香港でスペースを持つAxel Vervoordt Galleryが、アントワープ郊外の運河沿いに巨大なスペースを構えている。日本の具体美術のような現代美術の作品、中国やヨーロッパのアンティークや工芸品、ファブリックまで取り扱う商品のショウルームも兼ねている。要予約。

Chisai Fujita

Chisai Fujita . 藤田千彩アートライター/アートジャーナリスト。1974年岡山県生まれ。玉川大学文学部芸術学科芸術文化専攻卒業後、某大手通信会社で社内報の編集業務を手掛ける。5年半のOL生活中に、ギャラリーや横浜トリエンナーレでアートボランティアを経験。2002年独立後、フリーランスでアートライター、編集に携わっている。これまで「ぴあ」「週刊SPA!」「美術手帖」など雑誌、「AllAbout」「artscape」などウェブサイトに、展覧会紹介、レビューやインタビューの執筆、書籍編集を行っている。2005年から「PEELER」を運営する(共同編集:野田利也)。鑑賞活動にも力を入れ、定期的にアートに関心の高い一般人と美術館やギャラリーをまわる「アート巡り」を開催している。また現代アートの現状やアートシーンを伝える・鑑賞する授業として、2011年度、2014年度、2015年度愛知県立芸術大学非常勤講師、2012年度京都精華大学非常勤講師、2016年度愛知県立芸術大学非常勤研究員、2014~ 2017年度大阪成蹊大学非常勤講師などを担当している。 写真 (C) Takuya Matsumi ≫ 他の記事

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