滋賀県新生美術館最優秀提案者SANAAに決定!

ー次点は青木淳建築計画事務所に

In ニュース by Mitsuhiro Sakakibara 2015-04-08

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滋賀県は大津市にあるびわこ文化公園文化ゾーン内に生まれる新たな美術館設計者を決める設計競技の結果が3月17日に公表されました。国内では金沢21世紀美術館の設計者としても知られる、妹島和世さん西沢立衛さん率いるSANAAが最優秀提案者となりました。2015年3月中に契約が締結され、設計がスタートする運びとなっています。新設美術館のみならず既存館の改修を含む一体的なこの計画は、2019年度に完了する予定。

この計画と参加建築家については、こちらKABlogに掲載した記事「滋賀県に新生美術館計画が進行中!」でお伝えしておりました。今回の正式結果は滋賀県新生美術館整備室によるこちらのページから見ることができます。

「みんなで創る美術館」として高い透明性と公開性が目指されていた通り、単に結果のみが知らされるのではなく、「審査講評」と「県民アンケート」の結果も読むことができます。

各組織による技術提案資料
滋賀県立近代美術館増築その他工事設計業務公募型プロポーザルにかかる審査講評
新生美術館設計者選定プロポーザル第二次審査における県民アンケートの結果
 
2月27日に行われた1次審査通過5組による公開第2次審査の様子と合わせて、今回提案されたプランについてここで少し見ていきましょう。

なお、公開プレゼンテーションでは、普段国内外の仕事をしている方々のいわば「本番」の提案を見ることができる、またとない機会でした。審査員からの質疑に対してチームとしての応答を素早くまとめて切り返す質疑応答とあわせて、これ以上なく緊張感あふれる現場を垣間見ることができました。まずは、今回のオープンな設計競技実現に向けて尽力された方々に深く感謝したいと思います。

◯最優秀提案者:有限会社SANAA事務所

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県民アンケート4位で最優秀提案者となったSANAAによるプランの特徴はゾーニング、空間の仕分け方だと感じました。「知」のゾーンとして美術館に隣接する既存図書館が位置付けられ、「美」のゾーンとして新館が位置付けられるその中間に、既存館の一部を「ラーニングゾーン」として提案しています。

新旧の「対比」を二項対立的に見せるのではなく、機能を持った空間に新たな名前をつけていく、という対応は他の提案にも見られなかったため、展開が期待されます。一方、新しく挿入されるガラスボックスのような新館と既存館とが物理的にどのような対比を生み出し、その結果どんな風景が生まれるのか、がやや気になるところです。


◯次点:株式会社青木淳建築計画事務所

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唯一、夕照の庭の池を拡張する、という提案を前提にした青木案は、拡張した池の上に橋をかけて「エントランスブリッジ」というプラットフォームをつくり、既存館と分棟形式の新築につなぐという提案。建築関係者にとっては、90年代に九州で実現した青木淳さん設計の「馬見原橋」を思い起こさせます。県民アンケートでは最多得票でした。

展示空間の専門家である青木事務所出身の共同提案者西澤徹夫さんが具体的に説明する既存館の改修は、4億程かかる既存資料の移動コストを考慮。「作品を動かさないために既存建物を壊さない改修方法」を提案していたところが印象的でした。質疑での「虫をどう対応するのか?」という問題に対する応答も丁寧で、細部まで検討が行われていると感じました。


◯株式会社山本理顕設計工場

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5つの提案の中で最も立体的な提案。空間的読み取りが求められる提案だったためか、県民アンケートの結果は最低得票です。一部の室では、外周通路との間にワークショップなどに使える「創作室」を入れてバッファーゾーンをつくり、「展示室を開く」という通常考えづらいアイデアを実現しようとしていたことが特徴的でした。


◯株式会社隈研吾建築都市設計事務所

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分棟形式の新館を既存館から駐車場の方に置いていき、駐車場からの移動距離を最短にしようというテーマの案です。その新館を取り込む「リンクギャラリー」という通路状の空間を導入することで、ボックス内にとどまらない新しい空間利用が可能になるという旨でした。「リンクギャラリー」が「通路」とどう違うのかをもう少し空間的に聞いてみたかったです。


◯株式会社日建設計 大阪オフィス

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1983年に完成した既存美術館の設計者である日建設計の大阪オフィスの提案は、「使えるものは使う」というテーマの一体型改築案。他4グループが分棟型の中で、唯一の一体型提案です。その他様々なコストカットによって浮いた資金を滋賀のアートに還元する、というメッセージは、実現可能なら魅力的です。県民からの支持も高いものでした。

今回問題になった3つの美術「近代美術」「仏教美術」「アール・ブリュット」ついて、SANAAはニュートラルなボックスとしての新館を分散して配置し、いわばその「束ね方」によって、来場者と3つの美術との新たな出会い方が提案できるのではないか、という旨の提案を行っていました。審査講評にはこう書かれています。


展示空間について、神と仏の空間、近現代美術の空間、アール・ブリュットの空間を大きく区分した上で、複数の回廊により各展示空間をつなげることによってフレキシビリティのある展示を可能にする極めてすぐれた提案をしている。


ともあれ、SANAAの設計による金沢21世紀美術館も完成して11年が経ちます。国内外で精力的に新たな建築を実現させ、世界中の人たちを惹きつけるSANAA。今回滋賀に生まれる美術館は、彼らが手がける日本国内での増築物件としておそらく初の建築物になり、世界的に注目されることは間違いないでしょう。滋賀県に新しくどんな顔ができるのか、審査講評にもある通り状況は必ずしも順風満帆とは言えませんが、注目を続けていきましょう。


Mitsuhiro Sakakibara

Mitsuhiro Sakakibara . 建築や都市のリソースを利用して暮らし働く人の声を集め、彼らへのサポートを行う。個人として取材執筆、翻訳、改修協力、ネットカフェレポート等を実施。また、多くの人が日常的に都市や建築へ関わる経路を増やすことをねらいとし、建築リサーチ組織「RAD(http://radlab.info/)」を2008年に共同で開始。建築展覧会、町家改修その他ワークショップの管運営、地域移動型短期滞在リサーチプロジェクト、地域の知を蓄積するためのデータベースづくりなど、「建てること」を超えた建築的知識の活用を行う。 ≫ 他の記事

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