いま、日本の多くの自治体がアートに関わる場合、先月レポートした京都府の取組のように「地域あるいは地域住民のために」という場合が多い。今回紹介する「きしわだアートプロジェクト2017 竹Xアートとのであい」は、大阪府南部に位置する岸和田市の事業は、少し目的が異なるアートイベントであった。
岸和田市、と聞くと海が近いイメージがあるが、実は山にも恵まれた土地である。この「きしわだアートプロジェクト2017 竹Xアートとのであい」は、道の駅である愛彩ランドと隣接した山、丘陵地を会場としている。
有志によって普段から山の手入れはなされているものの、特に成長が早い竹を活用できないか、ということに悩んでいた岸和田市は、竹を「アート」にして活用することにした。地元住民のための展覧会、という地産地消はよくある考え方だが、岸和田市は地元の産物、しかも自然物を使った展覧会を試みた。
稲垣智子(岸和田市出身・在住)と植松琢麿のユニット「稲を植える人」は、地元に伝わる白蛇と美女にまつわる話を元に、立体、写真、映像を点在させるインスタレーションを野外に展開した。
日詰明男の《フィボナッチ・トンネル》は、週末になると行列ができるほどだった、という。この竹が実はすぐ近くから取られたものであると知ったら、おそらく誰もが「え!すごい!」と驚くことだろう。身近に体験ができるこんな大きなアート作品になれば、岸和田の魅力を再発見することにも繋がるからだ。
残念なことにこのアートイベントは20日で終わってしまったが、会期中に会場ではワークショップや音楽、演劇も行われた。
例えばフクロウをつくるワークショップ。つくられたフクロウは、会期中フクロウの森エリアでインスタレーションした。
アートイベントが乱立する現在、新たなアートイベントを発信するとき、目玉となるアーティストやアート作品は何か、地域の人と交流を図れるか、他のアートイベントとの差別化、ということばかりが優先順位として挙げられてしまいがちだ。しかしこの岸和田市のように、すぐそこに生えている竹を切ってみたらユニークなアート作品が生まれて、人々がそれを見に来て何かを発見する、というアートイベントも物語としてはアリだし、素敵だと私は思った。
【展覧会名】きしわだアートプロジェクト2017 竹Xアートとのであい
【会場】道の駅 愛彩ランドおよび周辺
【会期】2017(平成29)年3月11日(土)~20日(月・祝)
【公式サイト】https://www.city.kishiwada.osaka.jp/soshiki/10/kishiwada-art-project2017.html