あれ?「Hong Kong Arts Month」? アートウィークじゃなくて?例年よりプログラムが充実して、今年は日本の美術関係者をあちこちで見かけた、3月の香港をレポートします。
(参考記事)
アートバーゼル香港2014と香港のアートシーン
2016年 春の香港アート事情 / About Hong Kong Art Scene in 2016 spring
■ART BASEL in Hong Kong
香港、いやアジアのアートフェアの代名詞となったアートフェア。今年は現代美術というくくりの中でも、戦後美術史に出て来るような名作を展示しているギャラリーがいくつか見受けられた。
関西からの出展は少ないが、今年初出展となった大阪のThe Third Gallery Ayaのオーナー綾智佳さんに話を聞いたところ、「お客さんは思った以上に多国籍。しかも美術館のキュレーターから高校生まで、幅広い客層で驚いている」とのこと。
■ART CENTRAL
若手アーティストやギャラリーが参加するアートフェア。オープン初日と平日木曜日に取材で行ったが、来場者はひっきりなしで、思った以上に売れたしるしである赤いシールが目立っていた。
今年も出展していた大阪のTEZUKAYAMA GALLERYのオーナー松尾良一さんに話を聞いたところ「活気があるのはいつも通り。作品に興味を持ってくださったり、購入してくださる方が多くてうれしいです」とのこと。
■マーケットとは違う文脈で
1月にシンガポールの記事を書いた中で、アートフェアという作品を売る市場に反して、版画およびメディアアートの存在について触れた。3月の香港では、サウンドアートに特化したイベント「Hong Kong Solos」が街中の各所で行われていた。
このサウンドパフォーマンスイベント「An exposition, not an exhibition」は、香港で展覧会企画などを手掛けるSpring Workshopが主体となって企画された。サウンドアートというアートの隣人は、現代音楽(コンテンポラリーミュージック)とも呼ばれている。
例えば上の写真は、会議室の片隅にチェロを置き、プレーヤーは楽譜通り(といってもメロディを奏でるだけではなく、楽譜には「外を見る」というような注釈がある)に演奏する。鑑賞者は2、3人。
この写真は、アートスペースにある小さな給湯室が会場。コーヒーを入れる過程をパフォーマンスとして見せ、パフォーマーおよび鑑賞者は、それらの工程で発生する音とともに、別の電子音楽や町の雑踏の音をヘッドフォンで聞く、というもの。
アートフェアが大きな会場で作品を見て、買うという場所であるなら、このサウンドアートの会場は1対1で作品と向き合い、買うことはない場所だ。アートの消費のしかた、消費する場所が真逆であることに気付くとき、香港という町で触れることができるアートの幅の広さを知り、さらにこれから私たちがどこで、どうやって、アートを味わっていくべきか、ということを考えさせられるだろう。果たして大きな場所としての美術館がこれから必要なのか、小さな場所で個々に触れたアートに広がりがあるのか。それぞれの事象にそれぞれの課題はあることに、私たちはきちんと気付かなければならない。
【展覧会名】Hong Kong Arts Month
【会場】香港各地
【会期】2017(平成29)年3月1日(水)~31日(金)
【公式サイト】http://www.discoverhongkong.com/us/see-do/events-festivals/highlight-events/hong-kong-arts-month.jsp